独りで抱え込んでいませんか? 〜調整する経営のススメ
零細企業の社長というのは、まさに「板挟み」の連続です。
人は少なく、仕事は多い。待遇が良いとは言えないから、能力の高い人材はそう簡単には集まらない。となると、今いる人材をどう生かすかが勝負になる。しかし、それぞれが不満を抱え、問題が発生するたびに、「社長、どうするんですか?」と判断を求められる。何かを決めれば、必ず誰かの不満が出る。Aを優先すればBが不満を持ち、Bを立てれば今度はAが不満を言う。強権を振るって押し切ることもできるが、それで会社がうまく回るなら苦労はない―。
こんなふうに思い悩む経営者、特に社員が数人程度の、いわゆる零細企業の社長さんは多いのではないでしょうか。いったいどうすればよいのでしょうね。
答えは、「決める」ことよりも「調整する」ことにあるかもしれません。
「決める」より「調整する」経営とは
社長は、最終的な責任を負う立場です。だからこそ、「社長が決めなければならないこと」はたくさんあります。事業の方向性、採用や人事、給与の決定、業務の分担。どれも経営の根幹に関わる重要な事項です。
しかし、これらの意思決定こそ、社長が独断で決めるのではなく、そこに至るプロセスで社員と調整することが不可欠という発想の転換も必要かもしれません。
たとえば、「新しい人を採用するべきか?」という問題があるとします。
現場からは「人が足りない」という声が上がる。しかし、「新しい人が入っても教育の手間がかかるだけ」と反対する意見もある。親会社に相談しても、「増員は難しい」と言われる。こうした状況で、社長が「じゃあ採用はなし!」と決めても、「じゃあどうやって今の負担を減らすのか?」という問題は残るし、逆に「採用する!」と決めても、「現場のフォロー体制はどうするのか?」という課題が出てくる。
このとき重要なのは、「採用するか、しないか」ではなく、「どうすれば現場が納得できる形で負担を軽減できるか」について、社員と話し合うことです。
人を増やす以外の選択肢として、
- 業務のやり方を変えて、負担を減らせないか?
- 外部の委託を活用できないか?
- システムを導入して業務を効率化できないか?
こうした選択肢を社員とともに検討し、落としどころを見つける。このプロセスを踏んだうえで、最終的に「やはり人を増やす必要がある」と判断したなら、その決定には納得感が生まれ、現場の協力も得やすくなります。
「社長が決める」ことは変わらない。しかし、その決定がスムーズに機能するかどうかは、決定に至るプロセス次第なのです。
意思決定のプロセスこそ、社員と調整する
調整が大事とはいえ、社長がすべての決定を社員の意見に委ねてしまっては、会社は前に進みません。
では、どこまでを社員と調整し、どこから社長が決めるべきなのでしょう?
1. 会社の方向性は、現場の意見を踏まえながら決める
「これからどんな事業に力を入れるのか?」は、社長が決めるべき重要事項です。ただし、現場の意見を無視して決めると、絵に描いた餅になる。
ある会社で、新規事業を立ち上げることになった。しかし、現場の社員に話を聞くと、「そもそも今の仕事が手一杯で、新しいことをやる余裕がない」という声が多数。そこで、いったん新規事業を小規模テストで始め、既存業務との兼ね合いを見ながら進めることにした。結果的に、社員の負担を最小限に抑えつつ、新規事業を軌道に乗せることができた。
「社長が決めるべき事柄」ほど、現場の意見を取り入れた調整が欠かせない。
2. 人事や評価制度は、社員と対話しながら進める
給与や評価制度の決定も、最終的には社長の判断ですが、社員と対話しながら決めないと、不満の温床になります。
「なぜこの評価なのか?」「なぜこの昇給なのか?」といった部分を丁寧に説明し、社員の意見を聞くことで、同じ決定でも納得感がまったく違ってきます。
3. 業務の進め方や負担の調整は、現場と一緒に決める
仕事の進め方は、現場の社員が一番よく知っています。「効率が悪い」とか「負担が偏っている」といった問題は、社長が一方的に決めるより、現場と話し合いながら調整したほうが、解決策が見つかりやすい。
社長が「話を聞く」ことの意味
「結局、社長が決めるんだから、話を聞いても仕方がない」と思うかもしれません。しかし、社員は「決まったこと」そのものより、「どう決まったか」に納得できないと、不満を持つものです。
社長が話を聞き、「なぜそう思うのか?」を問い、問題の本質を見極めることで、意思決定の質も向上します。
たとえば、新しい業務システムを導入した会社で、現場が「やりづらい」と大反発。しかし話を聞いてみると、システムそのものではなく、「導入時の説明が不足していた」ことが問題だった。そこで、改めて説明会を開き、現場の意見を踏まえた運用ルールを作ったところ、スムーズに運用できるようになった。
つまり、決定そのものより、決定に至るプロセスをどう整えるかが、社長の重要な役割なのです。
ひとりで抱え込まない経営へ
社長は、最終的な責任を負う立場です。しかし、すべてをひとりで決める必要はありません。むしろ、社長が決めるべきことほど、社員と調整しながら進めることで、会社全体の納得感が高まり、組織として機能しやすくなります。
決めることが多すぎて、ひとりで抱え込んでいませんか?
もし、「どうすれば社員との調整がうまくいくのか?」「どこまで調整し、どこから決めるのか?」と悩んだら、一度、誰かに話してみるのもひとつの方法です。
「社長が決めるべきことほど、決めるまでの調整が大事。」
この意識を持つだけで、経営の景色が少し変わってくるかもしれません。

