価格転嫁の現実と課題:政策と現場のギャップ

価格転嫁は、中小企業が持続的に成長するために欠かせない。しかし、実際の現場では、価格転嫁が容易に進むわけではない。背景には、日本の経済状況や発注側・受注側の構造的な問題がある。

1. 価格転嫁に関する政策と中小企業庁の取り組み

政府は近年、価格転嫁の促進を重要な課題として掲げている。特に中小企業庁は、「価格交渉促進月間」を設けたり、「パートナーシップ構築宣言」を推奨したりして、適正な価格転嫁が行われるよう支援を強化している。さらに、公正取引委員会とも連携し、下請法に基づく指導を行うなど、企業間の健全な取引環境の整備に努めている。

しかし、こうした政策が存在する一方で、実際に価格転嫁を進めるのは簡単ではない。特に発注者側の担当者が直面する現実は、政策の理想とは異なる。

2. 発注者側の現実:「コストを上げられない」

発注企業の担当者にとって最大のミッションは、企業の利益を確保すること。そのため、仕入れコストの上昇はできる限り避けたいというのが本音だ。たとえ受注側から「原材料費が上がったので単価を上げてほしい」と資料付きで依頼されたとしても、それを上司や経営層に報告し、交渉すること自体が心理的な負担になる。

多くの担当者は、「会社として価格転嫁を認めてくれないと、個人では動きづらい」と考えている。担当者レベルでは価格転嫁を認識していても、組織の意思として明確な指示がない限り、現場での対応は難しいのが現実なのだ。

3. 価格転嫁が進まない要因

受注企業は価格転嫁の必要性を説明し、資料を提出し、正式な依頼書を送るなどの努力をしている。しかし、それでも交渉が進まないケースが多い。なぜなら、発注企業の担当者は価格交渉を持ちかけること自体にリスクを感じているからだ。担当者としては「できる限り価格を据え置く」ことが評価されやすいため、価格引き上げの話を持ち出すことが難しい。

現場では価格転嫁の必要性を認識しながらも、組織としての意思決定が伴わないために進まないという現状がある。

4. 価格転嫁を実現するために必要なこと

価格転嫁を実現するためには、発注側のトップが「価格転嫁に応じる」という明確な指示を組織全体に示すことが不可欠だ。担当者の裁量に任せるのではなく、経営層が「適正な価格転嫁は必要である」という方針を打ち出し、それを社内で徹底させる必要がある。

受注側も単に価格引き上げを要請するだけでなく、「価格転嫁が実現することで、より安定した供給が可能になる」「品質向上につながる」といった具体的なメリットを提示することで、発注側が受け入れやすい状況を作る工夫が求められる。

まとめ

価格転嫁は政府の支援策があるものの、発注企業の現場では、担当者が独自に判断しづらいという大きな壁がある。そのため、発注側のトップが明確に「価格転嫁を受け入れる」方針を示し、組織全体に浸透させることが不可欠だ。受注側も、価格交渉を単なるコスト増の話ではなく、相手のメリットを考慮した提案型の交渉にすることで、価格転嫁の実現可能性を高める必要がある。

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